学生たちに聞いてみました!TUTグローバルハウスってどんなところ?
掲載日:2022年03月08日
グローバルハウスに居住するグローバル技術科学アーキテクト養成コース(GAC)の学生4名に、グローバルハウスの思い出を聞きました。
長津緑さん:機械工学課程4年/茨城高専出身
永山智也さん:機械工学課程4年/福島高専出身
TAN ZHI EARNさん(クロ):電気・電子情報工学課程4年/マレーシアJit Sin高校出身
髙須麗奈さん:応用化学・生命工学課程4年/沼津高専出身
TUTグローバルハウスってどんなところ?
自ら進んでアクションすることで仲間を得た大切な場所
イメージとはちがったけれど、異文化に触れる経験ができた
まず、なぜGAC(グローバル技術科学アーキテクト養成コース)を選んだのか聞かせてください。
長津●約2か月もの海外実務訓練(インターンシップ)の制度が用意されていたことでした。イギリスの大学で、僕の専門である燃焼の研究をしている教授のもと、インターンシップを経験したいと考えていました。残念ながら、コロナ禍の影響で実現しませんでしたが、今年は長崎県にある企業の研究所行くことが決まっています。大学院に進学した後に、改めて海外にチャレンジしたいですね。
永山●僕は、高専のときに海外研修に行き、異文化に触れたことがあって、グローバルハウスでもさまざまな文化に触れる機会があると思い、入学を決めました。
クロ●GACは、日本の大学で唯一、日本語の読み書きがほとんどできなくても入学できるのが魅力でした。工学の勉強をしつつ、日本語を習得したいと思い、入学を決めました。入学当初は、文字を読むことくらいしかできませんでしたが、ルームメイトたちのおかげでここまで会話も上達しました。
髙須●私は海外での実務訓練があることに加えて、グローバルハウスで留学生と生活してみたいと思い、志望しました。1年目のルームメイト4名は、私以外、マレーシアからの留学生だったのですが、皆、日本語が上手でびっくりしました。そこは当初のイメージとはちがいました。
永山●僕はクロと同室なのですが、彼は僕より先に住んでいたので、すでに日本語がかなりしゃべれるようになっていたんですね。留学生は皆、日本語が上手で、その点は想像していたのとはちがっていましたね。ただ、授業やオンラインのイベントなどでは英語を話す機会もありました。
長津●僕自身は最初、部屋の扉を開けた瞬間に「終わった」と思ったんですよ(笑)。というのも、すでに先輩たちが住んでいるところへ入ったのですが、部屋に段ボールが雑然と置かれていたり、冷蔵庫には成長した玉ねぎが転がっていたり......入居2日目で、もう一人の新入生と一緒に大掃除をしたほどです。
永山●僕らも、最初の半年間は、皆、それぞれの部屋にこもったままで、ほとんど誰ともしゃべらない日々でしたね。
クロ●皆と仲良くなったきっかけは、永山さんの誕生会でした。その後は、お互いに時間があるときにボードゲームをやったり、お酒を飲んだり。どんなに忙しくても週に一度は、皆で会食するようになりました。
異文化を感じたのはどのような場面でしょうか。
永山●料理のときに、珍しい食材や調味料を使っているのを見て、味見をさせてもらったりしました。それから、お酒を飲むとき、ベトナムからの留学生たちの盛り上がりにはいつもびっくりさせられます。普段はおとなしくても、オフになるとはじけるんですね。
髙須●パーティやイベントを通して、宗教のことやハラルフードのことなどを肌身で感じました。異文化に触れるなかで、互いの文化を理解して、配慮しながら生活しなければならないと学びました。
クロ●日本人は礼儀正しく、電車なども時刻表通りにピッタリ来るのは素晴らしい。日本は暮らしやすいし、大好きです。
さまざまなイベントを通して仲間を増やし、リーダーシップを磨いた
皆さん、グローバルハウスではリーダーとしてイベントを企画されるなど、積極的に活動をされていたようですね。
永山●僕自身が昨年、グローバルハウス学生会(Global House Student Council : GHSC)の役員に立候補したのは、イベントにいつも同じメンバーしか集まらない状況を変えたかったからです。コロナ禍で思うようには活動できませんでしたが、クロや長津と互いにアイデアを出し合いました。
クロ●その一つが、新入生歓迎イベント"One Day Camp"です。実はマレーシアの大学では、3泊4日程度で、新入生のためのオリエンテーションを実施しているんですね。これを真似て、1日だけのイベントを企画したのです。70名ほどの学生と先生が参加して、ゲームしたり、長縄跳びをしたり、新聞紙を使ったファッションショーをして競ったり。一番、印象に残っているのは、最後に擬似キャンプファイヤーをしながら皆でダンスをしたことです。学内は火が使えないので、ランプを使って工夫したことも良い思い出です。夏祭りを開催できたのも楽しかったなぁ。
髙須●私自身がGHSCに立候補したのは、まわりを良くしようというより、自己を成長させるためでした。これまで、自分は組織のなかでリーダーシップを発揮したことがなかったんですね。実際に、クロさんたちと企画にたずさわるなかで、どうやったら人を巻き込めるかといったことを考えられるようになり、自身の成長を感じました。その成果の一つが、アセンブリルームの利用規約の見直しを進めたことです。
クロ●アセンブリルームというのは、イベントなどを開催できる宿舎内の共用スペースなのですが、規約を見直したことで、以前よりも使いやすくなりました。
長津●僕自身は、GHSCの役員を務めていたわけではないのですが、個人的にプレゼンテーションのイベントを企画して、マレーシアからの留学生に"マングリッシュ"(マレーシア英語)について話をしてもらったり、英語で会話するイベントを開催したり、皆に声をかけて映画やサッカーを見たりしていました。いつも10人弱くらいの人が集まってくれていました。
自ら積極的に活動しようと思ったのは、ただ待っていても理想と現実のギャップは埋まらないと思ったから。やり続ければ、賛同してくれる人もいるし、自分たちがめざす学生生活を実現できるようになる。何もしなければ、成功する確率はゼロですからね。
とくに印象に残っているイベントは?
長津●学生の一人が入院したときに、皆に声をかけて千羽鶴を折ってもらったことです。ふだんはイベントに参加しない人たちまで一緒に鶴を折ってくれて、入院している友人もとても喜んでくれました。無事に退院もできて安心しました。無関心なように見えて、心やさしい人たちの集まりなんだと実感しました。
クロ●私もあのとき初めて鶴を折ったんですよ! 僕の納豆嫌いを克服するために、納豆フルコースを食べるというイベントもやりましたね。皆が食べやすいように工夫をして調理してくれたので、美味しく食べることができました。いまだにちょっと苦手だけどね(笑)。
グローバルハウスでの経験を研究や社会に活かしたい
グローバルハウスに住んでみて感じたことや、将来の展望を聞かせてください。
永山●いまは、皆と仲良くなって楽しい日々を過ごしています。2022年4月からは、大学院に進学して、グローバルハウスの別の部屋に移ることが決まっています。
研究はプラスチックの強度の測り方に取り組んでいます。強化プラスチックはさまざまなところで使われていて、その強度を正しく測るというのは社会的にも重要な研究です。ここでの経験を活かして、グローバルにさまざまなことに挑戦していきたいと思っています。
長津●僕はここを出て、4月からは大学構内の別の宿舎に入居します。ここでの経験と自身の燃焼の研究を通じて、SDGsなどの社会課題の解決にグローバルに貢献できたらと思っています。
クロ●修士課程でも、GACのさまざまな活動に関わりたい。研究は新しい無線通信方法の課題解決に取り組んでいます。今後ますます重要になる分野なので期待していてください。
高須●以前は、気のおけない友人としか一緒にいたくなかったけれど、いまは新しく出会う人にも興味を持てるようになりました。4月以降はグローバルハウスの別の部屋に移りますが、また新しい仲間と出会えることを楽しみにしています。現在の研究は虫が自身を守るために出す毒の成分について。創薬や新しい害虫防除などに役立てられたらと思っています。
グローバルハウスでの暮らしは、日々の部屋の掃除など、やらなければならないこともあるけど、互いにコミュニケーションを取って、思いやりの気持ちを持つことができれば、きっと楽しい時間を過ごすことができるはずです。自身の学びと成長にもつながると思います。
(取材・文=田井中麻都佳)
記者プロフィール
田井中 麻都佳(たいなか まどか)
編集・ライター。文部科学省 学術審議会情報科学技術委員、国立情報学研究所 広報誌『NII Today』の編集デスクなどを歴任。大学や企業の研究者インタビュー、経営者向けコンテンツの制作、書籍の企画・編集・執筆などを手がける。